RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)は、データの冗長性確保や読み書き速度の向上を目的に、サーバーやNASなどで使用されています。
RAIDには、RAID5やRAID6、RAID10(RAID1+0)といった3台以上のHDDにデータを分散・重複させて冗長性を高めるモードもありますが、HDD自体の故障でデータが消失するリスクはゼロにできません。
そのような万が一の故障の際に役立つのが、「ホットスペア」と呼ばれる機能です。
今回は、RAIDにおけるホットスペアの概要についてご紹介します。
1 ホットスペアとは
ホットスペアとは、RAID構成内にあらかじめ予備のドライブ(ホットスペアディスク)を、稼働状態で格納しておく仕組みのことです。「ホットスタンバイ」や「オンラインスタンバイ」と呼ばれることもあります。
ホットスペア機能を有効にすると、RAIDを構成しているドライブの1台に障害が発生した際にコントローラーがそれを検知し、即座に予備ドライブへと切り替えてRAIDの再構築(リビルド)を自動的に行うのが特長です。
例えば、4台のHDDを格納したNASで、3台のHDDを使ってRAID5を構築し、残りの1台を予備(ホットスペアディスク)として設定したとします。
データを保存しているHDDの1台に障害が発生すると、稼働状態で待機していた4台目のHDDが自動的にRAID構成に組み込まれ、データの復元が始まります。
そのため、何らかの障害が発生したとしても、データの即時復旧が可能です。
2 RAIDでホットスペアを使用しないとどうなる?
ホットスペアを使用できる場合は、万が一に備えて稼働させておくことをおすすめします。もしホットスペアを使用しないと、どのようなデメリットが発生するのでしょうか。
2-1 故障した際に手間がかかる
RAID1やRAID5であれば、RAIDを構成しているHDDが1台故障しても、保存しているデータは失われずに残り続けます。しかし、この状態はデータの冗長性が失われた危険な状態です。
できるだけ迅速に、故障したHDDを交換してRAID構成を元に戻す必要があります。
この時、ホットスペアを使用していないと、HDDの交換作業を手動で行わなければいけません。HDDを交換する前に他のHDDが故障したり、交換するHDDを間違えたりすると、保存したデータの復元が困難になります。
HDDの交換作業中に、システムが停止して使えなくなる「ダウンタイム」が生じる点も問題です。
ホットスペアを使用すれば、障害が発生してもすぐに別のHDDにデータを引き継げるため、サーバーの復旧作業にかかる手間の軽減につながります。
2-2 データ消失のリスクが上がる
予備のHDDを用意したり、通電し続けたりするコストがかかる点は、ホットスペアのデメリットといえます。
しかし、ホットスペアを使用していないと、データ消失のリスクが上がってしまう点に注意が必要です。
RAIDを構成しているHDDに何らかの問題が発生した場合、正常なHDDに交換するまでは、冗長性が確保されない状態でRAIDシステムを運用しなければいけません。
交換作業のミスや遅れが原因でデータの消失・破損が生じると、復旧により多くのコストがかかります。
結果的に、ホットスペアを稼働させた方が、大きなリスクを回避することにつながるのです。
3 ホットスペアとコールドスペアとの違いは?
サーバーやNASの冗長化を実現する方法には、ホットスペアの他に「コールドスペア(コールドスタンバイ)」があります。
コールドスペアは、予備のHDDを用意しておくものの、故障が発生するまでは起動させずに停止した状態で保管する方法です。障害が発生してから予備のHDDを起動し、必要に応じて設定やデータの移行といった切り替え作業を行います。
コールドスペアは構成が単純で予備機を常に動かし続ける必要もないため、ホットスペアより運用コストを抑えられるのがメリットです。
その反面、故障が発生してから予備機を起動する都合上、交換作業に伴うシステムの一時停止が必要になり、耐障害性はホットスペアよりも劣ります。
常時稼働が求められる基幹システムやWebサーバーはホットスペア、数時間の停止では大きな問題にはなりにくいシステムやサーバーはコールドスペアなど、適切な使い分けが求められます。
4 ホットスペアと併せて活用したいホットスワップ
ホットスペアと併せて覚えておきたい用語に「ホットスワップ(ホットプラグ)」があります。ホットスワップとは、システムの電源を入れたまま(通電したまま)、HDDやファンなどの部品を取り外しできる機能のことです。
通常、電源を入れて通電している状態の電気回路は、突然配線を切り離すと故障する可能性があります。一方で、ホットスワップ対応のシステムは、部品の差し込み時にショートが起きないよう設計されているので、電源が入った状態でも問題なく機器を抜き差しすることが可能です。
ホットスペアとホットスワップを組み合わせれば、ドライブが1つ故障してもシステムを止めることなく元の状態を取り戻す運用を行えます。
5 ホットスペアは万全ではない点に注意
データの冗長性確保につながるホットスペアですが、データを守る対策として万全なわけではありません。
運用時は、以下の点に注意が必要です。
5-1 利用できないRAIDモードがある
読み書きの高速化が目的のRAID0(ストライピング)は耐障害性を持たないため、ホットスペアを構成すること自体が不可能です。
データの冗長性を高めることが目的の場合は、他のRAIDを構成する必要があります。
5-2 同時に問題が起きると危険
RAID1やRAID5といった冗長性を確保できるモードだとしても、複数のHDDで同時に問題が発生すると、データが消えるリスクが高まります。
例えば、ホットスペアを使用中に別のHDDでも問題が発生すると、障害の復旧ができなくなります。
問題が発生したらすぐにHDDを交換し、再構築を行うことが重要です。
5-3 再構築中のトラブルにも注意
再構築中は、HDDへの負荷が増すため、エラーや故障の発生確率が高まります。再構築の最中に何らかの問題が発生した結果、データが完全に消失してしまう恐れもあるため注意が必要です。
ホットスペア自体はデータの冗長性を高められる便利な機能ですが、データ消失のリスクをゼロにできるわけではありません。
日頃から、定期的にバックアップを取っておくことが重要です。
6 ホットスペア以外の対策との組み合わせが活用の鍵
ホットスペアを活用すれば、RAIDを構成しているHDDに問題が発生しても自動で再構築が行えます。
RAIDの冗長性を高め、データの安全な保存につながる点がメリットです。
復旧の際にシステムを停止させる必要がないため、ダウンタイムを防ぐことにもつながります。
とはいえ、ホットスペアはデータを100%守ることができる機能ではありません。RAID1やRAID5の場合、ホットスペアディスクを使用中に別のHDDでも障害が発生すると、データの復旧ができなくなってしまいます。
「ホットスペア機能があるから安心」と考えるのではなく、他の対策と組み合わせて使用することが大切です。
万が一、重要なデータを保存しているHDDに何らかの障害が発生していたり、データが読み取れなかったりする場合は、データ復旧の専門業者に依頼することをおすすめします。




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