テレワークの普及や転職の一般化といった社会の変化に伴い、退職者による「重要データの持ち出し」や「業務データの意図的な削除」といった事案が増えています。
退職者によるデータの持ち出しはどこからが違法で、企業側がデータ持ち出しの有無を調べるにはどうすれば良いのでしょうか。
ここでは、退職者によるデータ持ち出しのもたらすリスクや、企業が取るべき対処方法をご紹介します。

1 退職者によるデータ持ち出し・削除はどこでも起こり得るリスク
退職者によるデータの持ち出しは誰もが行う可能性があり、全ての企業が抱えるリスクといえます。
データを持ち出す理由は人によって異なりますが、主な理由としては次のようなものが考えられるでしょう。
・転職活動で自分の実績として活用したい
・会社に恨みがあり、データを使って私怨を晴らそうと思っている
・私用のパソコンや外付けストレージなどにデータを残したことを忘れていた など
データを残していたのを忘れていたケースなどは本人に悪意がなく、一見すると大した問題ではないように思えます。
しかし、いずれの場合もデータ持ち出しがきっかけで情報漏えいや改ざんなどのトラブルにつながり、企業に法的責任が発生するリスクがある点には注意が必要です。
2 退職者によるデータ持ち出しが疑われる場合の対処方法
退職者によるデータの持ち出しが疑われる際は、情報漏えいなどのトラブルに発展するのを防ぐために、迅速な対処が求められます。
持ち出しの可能性がある場合は、次のような方法で対処しましょう。
2-1 社内調査の実施
最初に、本当にデータが持ち出されたのか、持ち出されている場合はどのデータなのかといった情報の把握・整理に努める必要があります。
調査が必要なのは、「誰が・いつ・どのデータを持ち出したのか」「どのようにデータが持ち出されたか」「どの程度の被害があるのか」の3点です。
そのため、退職者のデータへのアクセス履歴や機器の操作ログなど、あらゆる情報の精査が求められます。
2-2 証拠を保全する
データの持ち出しが事実だとしても、確実な証拠がなければ法的に立証することはできません。操作ログやデータの送受信履歴、ファイルアクセスの履歴など、持ち出しに関する証拠の保全も必須です。
ただし、データの証拠保全作業には、専門的な技術が必要になります。
データの証拠保全が必要な場合は、デジタルフォレンジックの専門業者に依頼するのがおすすめです。

2-3 関係者への対応
違法なデータ持ち出しが行われていた場合は、退職者への警告や関係者への連絡を行う必要があります。退職者への警告は、状況に応じて弁護士などに相談することも検討しましょう。
関係者への対応や説明が遅れると、企業の信用低下につながりかねません。できる限り迅速に対処することが重要です。
3 退職時のデータトラブルに関するよくある質問
ここからは、退職時のデータ持ち出しや消去といったトラブルに関連する疑問と、その回答をご紹介します。退職者によるデータ関連のトラブルにお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください
3-1 データの持ち出しはどんな罪になる?
情報を持ち出したからといって、全ての行為が違法になるとは限りません。
ただし、顧客情報を企業に無断で私用パソコンに移していた、転職先で退職した企業の機密情報を利用している、意図的に情報を漏えいしたといった場合は、不正競争防止法や個人情報保護法などの法律に抵触する可能性があります。
いずれの場合も、退職者が情報を持ち出した客観的な事実を立証できないと、法的には主張が通らない点に留意してください。
3-2 USBメモリやクラウドへの持ち出しは特定できる?
USBメモリやクラウドストレージにデータをコピーされた場合も、USBメモリの接続記録やファイルのアクセス記録、パソコンの操作ログなどを解析することで、持ち出しを特定できる可能性はあります。
とはいえ、やみくもにパソコンを操作した結果、操作ログやデータなどが上書きされて証拠が消えてしまう恐れがある点には注意が必要です。
万全を期すために、調査はデジタルフォレンジックの専門業者に依頼することをおすすめします 。

3-3 データが完全に削除されている場合、どこまで調査・復元できる?
「ごみ箱」フォルダを空にされたり、初期化(フォーマット)を行われたりした場合も、データが上書きされていなければ、データを復元できる可能性は残ります。
また、仮にデータを完全に復元することができなかったとしても、「あるファイル群が意図的に一括削除されていた」という操作ログを復元できるかもしれません。
そのような証拠を証明できれば、退職者が「何らかの理由で証拠を隠滅しようと試みていた」という状況証拠を立証しやすくなります。
4 確実な証拠を掴むには専門的な調査が必要
退職者によるデータの持ち出しや削除は、多くの場合で会社の権利を侵害する違法行為にあたるリスクがあるものです。
特に、情報漏えいや競合他社への機密流出といった悪質なデータ持ち出しの場合は、退職者を罪に問うことができる可能性があります。
ただし、データ持ち出しで退職者に損害賠償を請求したり、警察に相談したりするには「客観的な証拠」が欠かせません。
データ持ち出しが疑われる際は、事態の全容解明と確実な証拠保全のために、デジタルフォレンジックの専門業者に相談することをおすすめします。



















