社外秘のような機密性が高い情報の流出を防ぐことは、ビジネスにおける基本です。とはいえ、流出による被害がより大きくなりがちな大企業であっても、データの持ち出しなどによる情報漏えい被害が起きているのが実情です。
社外秘の持ち出しを防ぐために、企業側はどのような対策を取れば良いのでしょうか。
ここでは、社外秘の持ち出しを防ぐための対策方法や、万が一情報漏えいが起きた時の対処法をご紹介します。
1 「社外秘」は機密情報のひとつ

社外秘とは、閲覧権限を社内の人員に限定した機密情報のことです。企画書や見積書、顧客リスト、従業員の個人情報などが社外秘に該当します。
社外秘の流出は競争力の低下や法的問題の発生、顧客からの信頼喪失など、さまざまな不利益につながるため、対策が欠かせません。
特に、近年は社外秘がデータとして保存されていることも多く、コピーやファイル名の変更が紙媒体に比べて簡単に行えるため、持ち出しやすくなっているといえます。
具体的に、社外秘データの持ち出しに用いられる主な方法は、以下のとおりです。
・個人のスマートフォンやタブレットなどで社外秘にアクセスする
・外付けストレージにデータをコピーする
・個人のクラウドストレージにデータをアップロードする
・重要なデータを個人のメールアドレスに添付・送信する
・画面のキャプチャ(スクリーンショット)を保存する など
2 社外秘を持ち出したことで問われる罪は?

社外秘を持ち出す行為は、犯罪にあたることもあります。従業員が社外秘を持ち出した場合、企業は以下の刑事罰に問える可能性があります。
2-1 窃盗罪・業務上横領罪
会社の所有物(資産)であるUSBメモリや紙の資料を持ち出した場合は、窃盗罪が成立する可能性があります。
ただし、窃盗罪は他人が所有する「物」を盗んだ時に成立するもので、データそのものは対象になりません。個人所有のスマートフォンに社外秘をコピーする、写真を撮って持ち出すといった行為は窃盗罪にならない点に注意が必要です。
また、アクセス権限を持たない人物が不正アクセスでデータを持ち出した場合は「不正アクセス禁止法」に、業務で預かったデータを私的利用した場合は「業務上横領罪」に抵触します。
2-2 不正競争防止法違反
データ自体は窃盗罪の対象にならないとはいえ、社外秘の不正な持ち出しが認められているわけではありません。顧客リストやノウハウといった社外秘データを持ち出して第三者に渡したり、私的利用したりする行為は「不正競争防止法違反」で刑事罰に問える可能性があります。
社外秘の持ち出しや流出で損害を被った場合は、民事責任で損害賠償を請求したり、就業規則違反で懲戒処分を科したりすることも可能です。
ただし、いずれのケースも立証・処分のために公的な証拠が必要になる点には留意してください。
3 従業員による社外秘データの持ち出し対策

内部の従業員や退職済みの元社員による社外秘データの持ち出しを防ぐには、日頃から対策が求められます。
データの持ち出しを防ぐ対策法の例を4つご紹介するので、できることから対策を行いましょう。
3-1 外付けストレージの使用制限
USBメモリや外付けSSD/HDDといった外付けストレージを使えば、コピーしたデータを簡単に持ち出しできます。データの共有やバックアップ用途で便利な反面、情報漏えい・持ち出しの要因になりやすい点に注意しなければいけません。
社外秘の持ち出しを防ぐために、外付けストレージの使用制限を設けると良いでしょう。例えば、パソコンに許可された機器以外を接続できないようにシステム上の制限を設定することで、データのコピーや持ち出しのリスクを減らせます。
とはいえ、外付けストレージの全面禁止は不都合が生じることもあるはずです。業務上必要な場合のみ、外付けストレージを使用できるように社内ルールを整備するのも良いでしょう。
3-2 適切なアクセス権限の管理
社外秘に誰でもアクセスできる状況だと、データを不正に持ち出されるリスクが高まります。アクセス権限を適切に管理し、業務上必要な範囲に制限することも重要です。
従業員の異動や退職などに伴うアクセス権限の変更・削除を迅速に行えば、無関係の第三者がデータにアクセスできる状況を防げます。
3-3 ファイルの操作ログの監視
ファイルの閲覧やコピー、外部機器への送信といった操作ログを保存・監視するのも、持ち出し対策として有効です。操作ログを管理していると従業員に周知することで、不正の抑止力になります。
また、万が一データの持ち出しが発生した際に、持ち出されたデータや実行者などを操作ログから特定できる点もメリットです。
3-4 データの取り扱いのルール策定
データの取り扱いに関する社内規程が整備されていないと、意図しないルール違反が起こりやすくなります。社外秘の取り扱い方や禁止事項、違反した際の罰則といったルールを明文化し、全従業員に共有させることも重要です。
具体的なルールとしては、デスク上に書類を放置しない、離席する際はパソコン画面をロックする、無断でデータをコピーしない、不要になったデータはすぐ削除するなどが考えられます。
4 不正な持ち出しは確実な証拠を集めることが重要

社外秘等の機密情報の不正な持ち出しが疑われる時は、法的措置を取る可能性も考慮して社内調査を実施する必要があります。
しかし、デジタルデータは容易に改ざん・削除できてしまうものです。持ち出しが疑われるものの、不正の証拠が残っていないケースも考えられます。
社外秘の持ち出しが疑われる時は、データを保全して不正の証拠を確保するために、専門業者にデジタルフォレンジック調査を依頼しましょう。
ロジテックのデジタルフォレンジックサービスは、情報漏えいやデータ改ざんなど、さまざまな事案を調査できます。
データを書き換えることなく保全できるので、保全作業のみの相談もお気軽にお問い合わせください。
5 社外秘の持ち出しが疑われる時は迅速に調査を

社外秘などの機密情報が流出すると、企業は大きな被害に遭う恐れがあります。特に、現在はさまざまな文書がデジタルデータとして保存されているため、情報流出が起こるリスクもデジタル化以前より増大しています。
対策によってリスクを減らせるとはいえ、データの不正な持ち出しを完全に防ぐ手立てはありません。社内の機密情報が持ち出されたら、迅速に証拠を集めるようにしましょう。
デジタルデータは簡単に改ざん・削除されてしまうため、専門業者にデジタルフォレンジック調査を依頼することをおすすめします。