企業活動には多くのリスクが付きまといますが、特に注意しなければいけないのが内部の従業員による不正行為です。
場合によっては、既に退職している元従業員がデータ改ざんや機密情報流出などの不正に手を染めていた事実が、後になって発覚することもあります。そのような際は、迅速に対処することが重要です。
ここでは、退職した従業員による不正行為が発覚した時、企業は何をすれば良いのかをご紹介します。
1 退職者が不正行為を行っていた場合のリスク

退職者によって行われる不正行為の具体例としては、次のようなものが考えられます。
・機密情報の漏えい
・従業員の引き抜き
・システムやデータの改ざん
・横領 など
いずれも注意が必要な不正行為ですが、中でも甚大な被害につながりかねないのが、情報漏えいとデータ改ざんです。会社の信頼を大きく損なう恐れがあるうえに、機密情報が流出した結果、競争力が低下する可能性もあります。
また、社会的な信用の低下に加えて、損害賠償の支払いなどで金銭的な損失が発生する可能性がある点も、注意しなければならないリスクです。
2 退職後に発覚した不正行為に企業が取れる対処法

元従業員による不正行為が発覚した際は、できるだけ迅速な対応が求められます。
不正行為に対して企業が取り得る対処法としては、次の3点が考えられます。
2-1 懲戒解雇を行う
退職後に不正行為が発覚した際に問題になるのが「退職済みの従業員を懲戒解雇できるか」という点です。
不正行為を行っていた従業員は、不正が発覚する前に自ら辞職を申し出てくることが考えられます。
自己都合による退職で、退職の効力が発生するのは、就業規則に定めがない場合は辞職願が提出されてから2週間後です。
つまり、辞職願の提出から2週間後までは企業と従業員の雇用契約が続いているため、懲戒解雇をすることができます。
反対に、辞職願の提出から2週間以上経過している場合や、合意解約によって従業員が退職している場合は、既に雇用契約が終了しているため、懲戒解雇は原則として認められません。
また、元従業員を懲戒処分としたことを社内外に公表する際は、表現方法や公表する範囲に注意が必要です。
社内に記録しておく程度であれば問題ありませんが、過激な表現を使用したり、新聞で発表したりすると、内容が事実であったとしても名誉毀損で訴えられる恐れがあります。
本当に公表する必要があるのか、表現が適切かどうかといった点は必ず確認しておきましょう。
2-2 退職金の返還請求・不支給
不正行為の発覚が遅れて懲戒解雇ができない場合も、退職金の返還を求められる可能性はあります。
ただし、退職金の返還請求を行えるのは、社内規定で「懲戒解雇に相当する事由があると判明した場合、一部または全部の返還を請求できる」などと事前に取り決めている場合だけです。
未払いの状態で不正行為が発覚した際は、退職金の一部または全額を支給しないという措置を取れる可能性があります。
退職金の扱いは事案によって異なるため、詳細については弁護士などに相談することをおすすめします。
2-3 損害賠償を請求する
機密情報の流出やデータの改ざんといった不正行為で企業が金銭的な損害を受けた場合は、損害賠償を請求することもできます。
損害賠償を請求する際は、客観性・正確性の担保された十分な証拠が欠かせない点に注意が必要です。
調査会社に依頼して、速やかに証拠の確保・保全を行ってください。
3 退職者の不正行為を防ぐ方法は?

退職者による不正行為を防ぐには、企業として対策を徹底する必要があります。
例えば、退職時にデータへのアクセス権限を全て削除する仕組みを徹底すれば、情報漏えいや不正アクセスなどのデータに関連するトラブルは防げます。
全従業員に対して、データの取り扱いに関するルールを周知徹底することも重要です。
また、横領などの金銭的な不正行為は、複数の担当者が書類のダブルチェックを行う、横領のリスクがある物品は定期的に数量を確認するなどの対策を取ることで、被害の発生を抑えられます。
4 不正行為が発覚した時は専門業者に調査の依頼を

退職者による不正行為が疑われたとしても、具体的な証拠がなければ損害賠償請求や退職金の返還請求などは行えません。
退職者のパソコンは、レンタルリースであれば返却、会社所有であれば初期化して再利用することが考えられます。
返却や初期化を行わないとしても、不正行為を行った当事者は証拠の隠滅を図るでしょう。つまり、従業員が退職する前後で、証拠となるデータは消えてしまう可能性が高いのです。
データの改ざんや機密情報の流出が起こった際に大切なのは、できる限り事案発生時に近い状況を保全することです。状況を保全しておけば、証拠の収集をスムーズに行いやすくなります。
不正行為の調査や、万が一に備えてデータの証拠保全を行いたい時は、すぐにデジタルフォレンジックの専門業者に調査を依頼することが大切です。
ロジテックのデジタルフォレンジックサービスは、情報漏えいやデータ改ざんなど、さまざまな調査に対応しています。データを書き換えずに保全も行えるため、保全作業のみの相談もお気軽にお問い合わせください。
5 不正発覚後はすぐ対処することが大事

従業員による不正行為が、いつ起こるか、いつ発覚するかを事前に知ることはできません。該当者が退職してから不正が発覚するケースも、十分に考えられます。
不正をそのまま放置すると大きな損失につながる恐れがあるため、発見が退職後だとしても厳正に対処することが大切です。
不正行為が発覚した際は、デジタルフォレンジックの調査会社にすぐ相談しましょう。
また、退職者による不正行為は、退職時期と前後してデータが消去されてしまうものです。事前に、データの保全も依頼しておくことをおすすめします。